なんだか小柳さんのことが気になってしまって、講義に集中できなかった。
「ボーっとして、どうしたの?」
「いや、別に……」
とだけ言いつつもボーっとしたまま次の講義室へと向かう。
「次、内田だよ?サボろっか」
「………」
「恋歌?」
「あ、ごめん。なに?」
早苗の問いかけに気づかなくて、聞き返した私を、早苗は怪しいとでも言いたげな目で見てくる。
「な、なによ…」
「そんなボーっとしちゃってさ。優貴恵のこと、気になるの?」
持ち前の姉御肌を出して、早苗は優しく聞いてくれる。
「ん~。私が気にする必要ってないんだけどさ。なんか腑に落ちなくて」
私が答えると、早苗はなるほどね、と肯いた。
「まぁ、気にしててもしゃあないしょ。恋歌の思い過ごしかもしれないし」
元気付けるように背中をポンと叩いて、早苗は私のちょっと前を歩く。
立ち止まって早苗の後姿を見ていると、なんだか元気が出てきた。
さすがだな、早苗は。
ふっと微笑んで、早苗の後を追って歩き出した。

