早苗は今日のデートを思い描いてるのか、浮かれ顔で窓の外を眺めている。
「ね、早苗」
「わっ!?れ、恋歌!?どしたの?」
「どしたの、はこっちのせりふ。なに浮かれてんのよ」
パシっと早苗の頭を叩いて笑う。
「それよりさ。秦野勇真。あの人って小柳さんと仲いい人だよね?」
「え?……あぁ。秦野くんね。そうだよ、優貴恵の幼馴染で、ほぼパシり状態」
呆れ半分と言った口調で、早苗は頬杖を付く。
「パシり?」
「そ。優貴恵の言うことは絶対で、優貴恵のためにすべてを尽くすって感じ。……ここだけの話、秦野くんって優貴恵のこと好きなんだよね」
同情の色を滲ませて、早苗は秦野くんを見やる。
「へぇ……」
「なに。秦野くんに何かされたの?」
秦野くんから視線を戻して、不安げな表情で聞く。
「されたっていうか……言われたっていうか…」
曖昧に答えると、始業のチャイムがなり、先生が入ってくる。
「おーい。席に着けよー」
いつものように耳が痛くなるような大声で言って、教卓の前に立つ。
大学生でも、言われることは小学生と同じ。

