「おもしろかったね」
「そうですね」
映画館の外に出て、今見た映画のポスターを眺める。
「かっこよかったなぁ……」
「え、誰が」
「この人」
ポスターに移っているアイドルの顔を指す。
あんまり芸能人が好きとかないし、このアイドルも興味はなかったけど、今日の映画で好きになってしまった。
「恋歌ちゃん、こういう人好きなの?」
ちょっと不思議そうな顔をしながら、城西さんはそう言った。
「いえっ。決してそういうわけじゃなくて……」
「まぁ、いいけどさ」
なんて笑いながらさりげなく私の手を掴んで、歩き出した。
そのさりげなさに一瞬ドキっとしてしまう。
慣れてるんだろうなぁ、城西さんはこういうの。
「ご飯にはまだ早いね。どっか入ろうか」
「えぇ」
チラッと腕時計を見て、城西さんはそう言ってくれた。
お腹は多少減っているけど、ご飯を食べられるほどじゃない。
そういうところも、ちゃんと分かってるんだなぁ。

