「……恋歌ちゃんって、おいしそうにご飯食べるね」
しばらくして、卿渓さんの存在を半分くらい忘れかけながら必死で料理と格闘してた私を見て、彼はそう言った。
「え?」
「いや、一口食べるごとにすごく嬉しそうな顔するから」
「え…」
は、恥ずかしい……。
そりゃね、存在忘れかけるくらい必死だったんだから、そんな顔もしてたのかもしれないけど。
「俺、ご飯おいしそうに食べる人、好きだよ?」
まただ……。
また、頬杖つきながら眩しいくらいの笑顔を見せる。
早苗の話を聞いたら、卿渓さんは私の苦手な人かもって思ってたけど、そんなことない。
笑顔の優しい、素敵な人。
というか、"好きだよ"って……。
こっこくは…く?
いや、違う違う!!
ご飯をおいしそうに食べる人、が好きって言っただけで。
私のことを好きだって言ってくれてるわけじゃない。
うん、そうだよ。
何……勘違いしてんの、自分。
おかしいよ、前ならそんなこと微塵も考えもしなかったのに。

