静かに、独り言のように、私の耳元で囁く。
「恋歌ちゃんと一緒にいれるだけで、俺は幸せだし、楽しいよ?少なくとも、今この時間、恋歌ちゃんは俺だけのものなわけだからね」
な…なんて恥ずかしい言葉を吐くの、この人は。
私を離して、小さく微笑む。
「で?何食べようか」
今度は、真っ赤になってる私を笑うこともなく、前方を向きなおす。
「な……なんでもい…いいです、はい」
しどろもどろになりながら、それでも答えを返す。
「じゃ、適当にレストランでも入りますか」
私も小さくうなずき返して、歩き出す。
15分ほど、黙ったまま歩いて、卿渓さんが立ち止まる。
「ここ、入ろうか?」
「あ、ここ……」
「俺らが始めて出会った場所」

