「どしたの?」
目を見開いて、ちょっと呟くように声を出した。
「……いいえ、なんでもありません。行きましょうか」
若干、怒り気味で微笑んで、また歩き出す。
「ちょっと待って」
卿渓さんが歩き出した私の腕を掴んだ。
「何で怒ってんの?俺、何かしたかな?……あ、さっき笑いすぎた?」
卿渓さんにそうやって聞かれると、なんかいじけてた自分が恥ずかしくなった。
「……怒ってなんか―――」
「嘘。怒ってるじゃん。……ごめんね?機嫌直してよ」
半笑いだけど、これ以上私がいじけてたら、卿渓さん怒らせちゃうかな。
「ホントに、もう怒ってないですから」
「じゃ、さっきまで怒ってたんだ?」
「まぁ、多少?」
そう言うと、卿渓さんはホントにおかしそうに笑った。
「でも、もう急にキスしたりしないでくださいね」
「それはどうかなぁ」
ニヤっと笑った卿渓さんはとても妖しく見えた。

