「ちょっと待ってよ、恋歌ちゃん!!」
後ろから卿渓さんが呼び止めてるけど、知らんぷり。
あんなに笑うなんてっ。
ガキくさいけど、もう頭来たっ。
「もう、恋歌ちゃんってば!!」
人の間を器用に縫って歩いて、エスカレーターもまるで階段の如く足早に上る。
そしてまた、足早に売り場を抜ける。
まるで、卿渓さんから逃げてるみたい。
「ちょっと!!」
まだまだ。
全然無視するよ。
それにしても、卿渓さんはただ急ぎ足で私についてきてるだけだけど、走ったりとかすれば私に追いつけるのにね。
……逆に、遊ばれてる、私?
「うゎっ」
そう思ったら急に足が止まった。
そのせいで、卿渓さんが私の横を通り過ぎる。

