バスを降りて、隣町の駅前を歩きながら、卿渓さんはまだクスクスと笑ってる。
「もう、いい加減笑うの止めてくださいっ」
恥ずかしすぎる……。
21の癖して、男性にキス…しかも頬にされたくらいであんなに真っ赤になるなんて!!
小学生でも照れずにやってるのに。
だんだん、自分に嫌気が差す。
男嫌いになったのは仕方ないけど、まったく恋をしてなかったわけじゃないんだから……。
ホント、呆れる。
「だって、かわいすぎるんだもん、恋歌ちゃんったら……」
言いながら、また卿渓さんはクククと笑った。
「もう、いいですから。……ほら、あそこ入りましょう?」
私が指差したのは、大体の駅前にありそうな大手デパート。
外にいると相当暑いから、とりあえず涼みにね。
「あ、うん。……それにしても…」
まだ笑ってる。
ちょっと涙まで出てきてる卿渓さんをチラっと睨んで、私は足早にデパートに入って行った。

