「いや、絶対言ったよ、恋歌ちゃん!!」


「だから、言ってないですって、そんなこと」


ご飯を食べ続けながら、尚も言い合いを続ける。


「恋歌ちゃんが、俺を見てかわいいなんて……。今なら俺、死んでも後悔しない!!」


一人で勝手に浮かれてる卿渓さんを見て、またかわいいと思ってしまったのは絶対に秘密。


ここまできたら、素直じゃないキャラで行こう。


男の人とのデートを楽しむために、ひとつ設定を乗っけてみる。


「何意味わかんないこと言ってるんですか、卿渓さん。早く食べましょう」


クスクス笑いを堪えながら、卿渓さんをなだめて、ご飯を食べさせる。


なんだかとっても嬉しそうな顔をしながら、彼はスパゲティを食べている。


たまに、私の顔を覗いては、ニヤぁっとする。


私はもう食べ終わってるから、そんな卿渓さんの様子を笑いそうになりながら眺める。


「……よし、行こうか」


まだニヤニヤしながら、伝票を掴んで立ち上がる。


「あ…お金…」


「え?……あぁ、普通デートしたら男の人が払うんだよ?」


ちょっとびっくりしたような口調で言う。


「あ……すいませんっ」


恥ずかしくなって、顔を伏せる。


デートなんてもう何年もしてないし、私がデートをしてた頃って、学生時代で、どっちもお金ないから大概割り勘。


男の人が払ってくれるっていう概念なんて、ない。