「赤城さーん、私の代わりに掃除やっておいてくれない?」

「…はい、いいですよ」

「ありがとー、赤城さんならそう言ってくれると思ったぁ」



私の下の名前を知っている人って、同級生でいるのだろうか。

彼女のゴテゴテの長い爪を見つめながら、そんなことを考えホウキを受け取った。

どれだけ不満に思っていても頼まれると笑顔で引き受ける自分は、結局弱いのだ。

周りにびくびくして、断ったらどうなるのか、どう思われるのか。

周りの評価なんて気にしないような努力なしの容姿くせに、そういうことだけは一丁前に気にする。

こんなんだから、友達ができないんだ。