【完】トリプルスレット

「いい加減逃げるのは辞めようよ、心空」


綾先輩はフッと優しく微笑むと、続けて私を諭すように、優しい言葉をかけ続けた。


「心空のいい所は、なんでも器用に出来ること。だけどそこが悪いところでもある。出来ないことがあると、すぐやめようとする。中学の時も心空に言ったけどさ。続けない事が一番格好悪いんだからね」


綾先輩は私の胸をトンと拳で叩くと、ニッコリ笑ってこう言った。


「悔しかったら見返してやりなよ。その為には、格好悪くてもどうしたらいいか教えてもらいなよ」


綾先輩は、「じゃあ」と言って手を振ると、ボールのカゴを持って、野球部の練習へと戻っていった。


「綾先輩……」


私は綾先輩の姿を見送り、トボトボと体育館へと戻った。