【完】トリプルスレット

「今から一対一で勝負だ。俺はディフェンス、お前がオフェンス。一本決まったらそこで終了。中に入って練習に混ざる。オッケー?」


「はい」


なんだか分からないけど簡単なことじゃん?

一本決めればいいだけのことでしょ?




こんなので絶望?




……するわけないじゃん。



私はアスファルトの地面に書かれているコートのハーフラインまで下がった。

クルリと振り返ると、内野コーチは特に構えることもなく、両手を腰に当て、余裕そうに私を見つめている。


「ほら、パスよこせよ」


「はい」


私は内野コーチの指示に従い、パスを出した。

内野コーチはそのボールをふわりと受け取ると、私に向かって、右手の手首のスナップをきかせスピードのあるパスを返した。


「いたっ」


あまりのボールの速さに、私は受け取るのがやっとだった。

手がジンジンする。


「ほら、スタート」


内野コーチがニヤリと笑った。