【完】トリプルスレット

「それってどういうことですか?」


「お前なにも聞いてないの?」


「え?」


「そっか・・・お前知らないんだ」


内野コーチはそれだけ呟くと、クルリと体の向きを変え、ボール庫へボールを入れると、リュックを背負った。


「帰るぞ」


「は、はい」


私は足早に体育館を後にしようとする内野コーチの背中を追いかけた。


内野コーチの車の助手席に座る。

車のエンジンの音と共に、車の中に青いライトが光り輝く。


「夜は青く光るんですね」


「ああ、そうだよ。格好いいだろ?寒くない?暖房つけるな」


夜の冷え切った空気の中、ひとりぼっちで待っていた内野コーチの車は、ボオオという音とともに、暖かくなっていった。