【完】トリプルスレット

誰もいなくなった体育館。

私と内野コーチの動く音だけが、冷え切った体育館に響く。


床にゴムが擦れる音、ドリブルの音、そして息づかい。


まるでその音が会話のように聞こえる。




一対一をするたびに、私と内野コーチが近づいていくような、そんな感覚になった。




内野コーチが私をたやすく抜いてシュートを決めたところで、勝負が終わった。


「おっし。これで終わり。俺はモップがけしてるから、着替えてこい」


「はい・・・・・・」


また今日も負けた。

そんなことを思いながら、更衣室へトボトボと向かう。


「心空!そんなに落ち込むな。俺には到底かなわないけど、かなり上手くなってるから」


振り向いた所には、内野コーチの優しい笑顔があった。




ドキ・・・ドキ、ドキドキ


心臓がどんどん高鳴っていくのが分かった。