ゆっくりと、開くドア

朝になり、伊吹は
戻って来た。

私は、一睡もできないまま
ソファーに座って朝を迎えた。

同じ姿勢で長時間、居た為に
痛む腰を、手で上下に
擦りながら

貴方に声をかけた。

「イブ・・・あなた
 おかえりなさい」

私は、貴方の名前を
いつものように、軽々しく
呼んではいけないような
気がした。

なぜか言葉も、いつもと
違って、他人行儀になる。

「昨日は、どちらに・・・」

伊吹は、私の言葉を最後まで
聞くことは無く、目も一度も
合わせてはくれない。

そして一人、寝室へと向かう。