「きゃぁ!」
「お姉さんも構えなきゃ駄目だよ?」
「駄目だよ?」
可愛らしく上目遣いで猫なで声を出ながら斧を大きく上に振り上げる。
琴音は目を瞑った。
キンッ…
琴音の耳に入った音は、肉を切り裂く音ではなく鈍い金属音だった。
琴音はゆっくりと目を開けて音の方を見た。
そこには双子の斧を日本刀一本で止めている少女の姿があった。
「邪魔しないでよ!」
「良いとこだったのに!」
双子は口々に少女に怒鳴っている。
少女は何も言わずに双子を吹っ飛ばすと静かに日本刀を鞘に納めた。
双子は叫びながら飛ばされて門の柱にぶつかった。
2人とも涙目で咳き込んでいる。
「いったーい(泣)」
「何すんだよ!芽依」
「……五月蝿い。」
少女…葛城 芽依(カツラギ メイ)は顔色1つ変えずに呟いた。
「……助かっ…た?」
琴音は尻餅を付きながらかすれた声で言った。
「大丈夫か?すまなかったな…琴音殿」
「はい…あれ?何で名前…」
「我が主がお待ちだ。着いて来なさい」
芽依は琴音の質問に答えずに門の中、学園の敷地内へと歩き始めた。
琴音は仕方無く芽依の後を続く。
「え〜、行っちゃうの?」
「つまんないよ〜」
双子が叫ぶが芽依は見向きもせずに
「…お前達も来い」
と言った。
双子は嬉しそうに笑うと琴音の後ろから着いて来る。
「我が主は気が短い…急がねば白い薔薇が赤い色に染まってしまう…」
「え?どういう意味ですか?芽依さん」
「………?何の事だ?」
芽依は一瞬立ち止まり顔を琴音に向けた。
自分が何を言ったか忘れてしまっているようだったが、琴音には芽依の違う顔がとても怖いと感じられた。