「まっ、暇つぶしには なったじゃん」 高橋はいいほうに 丸めこもうとする。 否定の意を示そうとしたが ちょっと考えてみると 「まー、確かに」 とバカみたいにうなずいてしまった。 味気ないこの生活に 曖昧な個性を色付けた。 …気がした。 隣町に着く放送が流れ 私たちが乗った電車が停車すると 同時に現実に戻された。 「行くか」 高橋が軽い身なりで立ち上がる。 「言われなくても」 私は反抗するように 一歩前を歩いた。