ナミは言った。
「田舎に帰れ、デブ女!」
あたいは耳を疑う。
とりあえず、今のは聞かなかったことにして
質問する。
「こちらに勤められて長いんですか?」
「いえ、まだ4年です。」
ナミは得意げな顔をした。
横をチラリと見るとハルがニヤニヤ笑っていた。
そして、会話が流れ
ナミの容姿の話になった。
向こうから振ってきた会話だったので
仕方なく言葉を返す。
「可愛いね。」
すると、衝撃の一言が・・・返ってきた。
「褒め方知らねえのかよ、デブ!」
信じられない言葉だった。
確かにあたいは太い。
当時、160センチ57キロもあった。
(今はもっと太い)
しかし、誰かに迷惑をかけているわけではない。
正面に座る二人は涼しげな顔をしていた。
その日はチーフとナオ、パートのオバサンの紹介があった。

今、思えば・・・
初日にチーフが現れなかったことは不思議だ。
同じ建物に寮があり、エレベーターで3階降りるだけ。
それだけなのに、現れなかったチーフ。
イジメを見ても、止めに入らなかったベテランのパートさん。
元、料理教師なのに、教えてくれなかったナオ。
誰も優しい人がいなかった。
あたいは、どこまでも続く暗く長いトンネルを
くぐり始めた。