母は苦渋の決断を下し
全員で実家に戻ることになった。
だって、祖母のあの目・・・
何か企んでたよね。
あたいの一人先走った空想ならば
良いのだけど。
あの目は何を御所望だろう?
Sさん、またはSお嬢様。
(祖母は庄屋様から苗字を頂いたお嬢様の出身)
だから、怖い。
今まで何もかもが思いどおりに希望を叶えてもらってきた祖母の頭の中。
嫌な予感がする。

「ねぇ、やっぱりそうでしょう?」
「帰る時は皆、一緒。」
少し離れたところから母と姉の声がする。
「死ぬときは一緒よ」的な聞こえ方がして
身の毛がよだった。
どうしようも出来ないあたい達は肉食動物に睨まれた如くに怯え、
祖母の言うとおりに全員で帰るしかなかった。

さっきまで、パーティの気分だったのに・・・
気付けば眉間に皺を寄せ、家のことを、叔父のことを考えていた。

叔母の車に乗り込み、あの重苦しい家へと向かう。
車窓から緑色のラインが流れ
景色がだんだん変わっていく。
車を走らせるたびにあたい達の家へ引き戻されていくようだった。
凄いスピードで家があたい達を召還してるみたい?
嫌だな。。。
でも、言えない。
言えば、母さんは荷物をまとめて実家のEという街に帰らなければならない。

「相変わらず卑怯な人だな。」
あたいからのささやかな抵抗とも思える一言だった。
さぁ、帰ろう。地獄の家へと・・・
ワゴン車の引き戸を開け、玄関についた。
「もう、帰ってこないんじゃなかったのか?」
叔父の先制攻撃だった。

今の言葉から分かるように
叔父は何も反省していないのだ。
そして、祖母も。
この叔父をこんなにも甘やかして育てて、手がつけられなくなったのは誰の責任だ?
今回の事件には叔父の暴力だけが原因ではなく、
我が家の狂った家そのものに問題があった。

そう思えて・・・仕方ない。