冷たい月




俺はモップを2本出し
そのうちの1本を手渡した。




『ありがとうございます』




モップを受け取ったテンが
モップ掛けをすぐに始めようとしていた。




『今から焦って掛けても
門が閉まる時間には間に合わないから
ゆっくりでいいぞ。
通用口から一緒に出ればいいから』




テンが申し訳なさそうにこっちを見た。


…いや、悪いのは俺だから…




そう思いながら
俺はテンの隣に並んだ。



『毎日、頑張ってるな。すげーよ』



『別に頑張ってるつもりは…』




テンはうつむいたまま答えた。




『みんなにテンって呼ばれてるんだな』





『先輩たちが付けてくれたコートネームで』


そう言いながら少しはにかんだ。