【平和な国、にょっひら王国。あれから5年、科学者は研究を続け、クローンではない妖精を作れるようになり、少子化や高齢化のバランスをコントロール出来るようにまでなった。昔のように妖精達が舞い花達が笑う、そう、そんな平凡な毎日の中…―】

「ラブ様!」

【いつものように巡回をしていたラブを呼び止める少女の声。ラブはキラキラする粉を振りまき、くるっと振り返り少女を見つめます。声は幼いが姿は24歳くらいでしょう。国に仕えている証のシルバーのバッチが左胸に咲いていました】

「どうしたの?」

【ラブは彼女の肩に座って綺麗に笑って訊きました。彼女は走って来たのでしょう。息が荒く頬も赤く染まっていました。何度か深呼吸をしてから彼女はラブに言いました】

「先程、サユ様から連絡が来て…」

「サユから…?」

「ええ、国王様が高熱で倒れて…」

「ジジィが?!」

【話を最後まで聞かずに城へ大急ぎして飛んでいきました。国王は今朝よりも随分と小さくなってしまったかのように思えました。】

「国王…」

【呆然とラブは呟きました。ベッドの脇には既に泣き崩れているサユと冷静というには悲しすぎる、無表情なアイムが居ました。アイムはラブに振り向くと、小さく苦笑いをしました】

「今夜が山場でしょう」

【隣から医者がラブに囁きました】

「何で国王が…」

【ウィルス性の肺炎、それプラス高齢、助かる見込みはないのでしょう。そしてその瞬間が来る時はそんなに時間の掛かることではありませんでした】

「ラブ、アイム、サユ、それからみんな、愛してるよ」

【掠れた声で小さく唸ると、そのままゆっくり息が止まりました。皆、泣き続けるしかありませんでした。その時、国王が最後に流した涙が光りました】

「な、に…?」

【ラブが呟くと、皆、ラブの目線を追って国王の涙を魅入りました。そこから小さな小さな子供の妖精が生まれました】

「どういうこと?」

【ラブは震えた声で良いながら、自分より小さな妖精を抱えました。】

「マサキ」

【小さな妖精はにっこり微笑んで名乗りました。いずれ、妖精のリーダーになることも知らずに。このお話はここでおしまい。いつかにょっひらの世界を貴方も訪れるでしょう…―】