しばらくはキョロキョロと部屋を見回していて、やがてテーブルに上がったままの教科書に視線を定めた。

彼はそれに手を伸ばしかけて、しかし慌てて引っ込めた。

「触ってもいいですか?」と興味津々に訊ねたので、私は頷いた。


「高校二年生の理科の教科書ですね。楽しいですか?」

「ううん、あんまり。ちゃんと授業に出て、先生の話し聞かなくちゃ、面白くないよ」

「どうして?」