Dangerous city

しかし。

「何が…?」

あろう事か、八戸は何の感情も持ってはいないようだった。

「別に致命傷を負わされた訳じゃない…犯されかけただけ…任務遂行に支障はない…」

それは、年頃の娘が言う台詞とは思えなかった。

輪姦されかけたのだ。

本来ならばもっと脅えて、もっと泣きじゃくって、動けなくなってもおかしくはない。

なのに。

「犬に噛まれたと思えばいい…何の問題もない」

見ず知らずの、しかもイカレた暴徒達に触れられた事などまるで気にしていないかのように、八戸はいつもの無感情無表情。

その事に愕然とする俺達に、彼女は言い放った。

「…貧しい階級の者は…いつ富裕層の男に犯されて孕まされても不思議ではない…命があるだけマシ…『私の育った土地』ではこんなの当たり前の事…」