「…く…っ!」

歯噛みする。

確かに俺達を包囲しているのは、最早人の理性をなくしてしまった殺人鬼達。

しかし…俺は…俺だけは、人殺しする事を肯定したくはない。

こんな姿に成り果てた錯乱者達でも、元は人間だ。

無闇にその命を奪いたくはない。

助けられるものならば、助けたい!

容赦なく錯乱者達を絶命に追い込む八戸とは対照的に、俺は必要最小限の殺傷に留めた。

六道さんなら嘲笑うかもしれない。

覚悟が足りない、甘いと叱責されるかもしれない。

だけど、俺はこの戦いにこだわり続けた。

人を殺す事を、当たり前のように思いたくない!

だが…たった3人では限度があった。

次第に圧されていく俺達。

その圧倒的な軍勢に、対応しきれなくなっていく。

そして見せてしまった一瞬の隙に。

「っ…!」

銃身を掴まれ、腕を、肩を、髪をつかまれ。

八戸が錯乱者の群れに押し倒された!