完全に主導権は八戸に握られたままだった。

…俺一人ならば、それでも八戸と対等とはいかないまでも、何とか逃げおおせる事はできる。

しかし…。

傍らに立つハルカの横顔を見る。

彼女がいる以上、敵に回せば八戸は確実にハルカから狙ってくる。

八戸はテロリストとしてはプロフェッショナルだ。

かつて脱出行を共にした相手だから、か弱い女だから。

そんな理由で躊躇するような人間ではない。

敵対する人物ならば情けも容赦もかけず、余計な感情を差し挟まず、精密機械のように仕留める。

八戸由岐はそういう人間だった。