Dangerous city

俺達の目前に立つ八戸。

彼女を一時的な仲間として迎え入れる前に、俺にはもう一つ確認しておきたい事があった。

「『大学病院占拠事件』の時に持ち去った天然痘ウイルス…あれをどうした?」

「……」

八戸は一度だけ、大きな瞳を瞬きさせた。

そして言う。

「もう…使い果たした…」

「てめぇっ!!!!!」

瞬時に頭に血が昇り、俺は八戸のスニーキングスーツの胸元を掴む!

天然痘ウイルスを使い果たしたという事は、どこかで危険な伝染病が蔓延しているという事だ。

勿論彼女は、その為に大学病院からウイルスを持ち出したのだろうが…。

「心配しなくていい…」

激昂する俺には目もくれず、彼女は腰のホルスターから自動拳銃を抜いて差し出した。

「ウイルスは日本国内では使用していない…すぐに天然痘がパンデミック(ある伝染病が世界的に流行する事)を起こす可能性はない…今はそんな事より…」

八戸の手にした拳銃が、俺に手渡される。

「如何にしてこの街から脱出するかじゃないの…?」