「ただ…」

感情を感じさせない、八戸の大きな瞳。

その瞳に昏い光が宿る。

「ここでの調査結果が『使える』ようなら…恐らくは別の場所で利用する…私が雇われているのは…そんな組織…」

「成程ね…」

唾棄したくなる感情を抑え、俺は冷静さを保つ。

反吐が出る。

やはり八戸を雇うような組織というのも、彼女と同じ穴のムジナという訳だ。

しかし、彼女との会話で一つ分かった。

八戸は、この街の異常事態の元凶ではなさそうだ。

彼女が元凶だとするのなら、この街が無法地帯と化した事でテロとしては成功している。

八戸がこの場に留まっている必要はない筈だ。

にもかかわらず、彼女はこの危険地帯に敢えて残り、尚且つ敵である筈の俺達を助けた。

助けた理由は定かではないが、八戸がこの街の異常事態の原因を調査しているというのは嘘ではないようだった。