屋根の上の八戸を、強い視線で睨みつける。

最悪の状況でこの女と遭遇してしまった。

『アミューズメントタワーシステム暴走テロ』、『大学病院占拠事件』の二つに関与した首謀者。

金さえ積まれれば、どんな組織の依頼でも受けるフリーランスの国際的テロリスト。

それが八戸由岐の素顔だった。

愛らしい人形のような顔とは裏腹に、表情一つ変えずに見知った人間さえ殺す技術と非情さを持っている。

高校生の時にこの女と遭遇してしまった事が、俺とハルカの運命を変えてしまったのだ。

彼女との再会はいつでも修羅場。

命のやり取りをする、危機的状況ばかりだ。

俺は公安外事四課の捜査官であり、八戸はテロリスト。

対峙と同時に殺し合いの戦いをする事になる。

…今回は分が悪かった。

こちらは丸腰の上、負傷もしているし疲労困憊。

その上ハルカも連れている。

戦闘になれば圧倒的不利だろう。

しかし…。