ちょうど俺達と横転したトレーラーを見下ろす位置に当たる、民家の屋根。

その屋根伝いに、人影が姿を現した。

真っ赤に染めた、背中までの長い髪。

体のラインがはっきりと出る潜入任務用の黒のスニーキングスーツ。

そのスニーキングスーツの各所に、ハンドガンや予備のマガジン(弾倉)、グレネード、大型ナイフを装備し、更には背中にショットガンを背負い、手にはスナイパーライフル。

まるで戦争にでも行くような出で立ちで、その女はこちらを見下ろしていた。

端正な顔立ちながら、その表情は変化に乏しい。

無表情と言ってしまってもいい。

彼女は俺と初めての邂逅の時からそうだった。

錯乱者達とは対極。

いわば凍りついた殺意を、その能面のような顔に宿していた。

「…八戸…由岐!」

因縁あるその名前を口にする。

実に一年ぶりの再会だった。