「こっちだハルカ!」

俺は咄嗟に狭い路地へと駆け込む。

大型車進入禁止の標識が立てられた道路。

本来ならば軽自動車が擦れ違うのがやっとといった感じの路地だ。

両側は民家のコンクリート塀があり、トレーラーなどとても走れる道幅ではなかった。

…正常な者ならそう考える。

しかしあのトレーラーに乗っているのは、正常とは対極に位置する錯乱者。

俺達の逃げる背後で、ギアを変速する音が聞こえた。

直後。

「くそっ、マジかよ!」

俺は毒づく。

トレーラーはコンクリート塀を破壊し、削り取りながら暴走する!

道幅が狭ければ壊せばいいと言わんばかりに。

理性とか、常識とか。

そういったものが完全に失われた錯乱者ならではの行動だった。