俺達を轢き損ねたトレーラーは、エンジンの唸りを上げながらゆっくりと方向転換する。

黒い排気を撒き散らしながら、大蛇がくねるように車体をこちらへと向けている。

「立て、ハルカ、早く!」

まだ倒れたままの彼女を強引に引き摺り起こし、俺は走り出す。

一度仕留め損ねたからと、トレーラーは諦める気は毛頭ないようだった。

逃走する俺達を。

「く…!」

爆音を上げて追跡してくる!

路上に放置された乗用車を跳ね除け、横たわったままの瀕死の錯乱者をもう一度轢き、傾いた電柱に衝突して横倒しにしながら。

それでも執拗に俺達を追いかけてくる!

まさしく暴走。

巨大な車体と荒れ狂うエンジンによって凶器と化したトレーラーは、誰にも止める事などできはしなかった。

ガソリンが尽きるまで、執念深く俺達を轢き殺す為に追いかけてくる!