俺は即座にハルカの手を取って方向転換した。

まともに戦うには数が多すぎる。

こちらには武器もない。

今は逃げるしか打つ手はない。

そう思って踵を返し。

「!!」

いつの間にか背後にも、同様の錯乱者達が迫ってきている事に俺は驚愕した。

こちらにも十数人。

凶器にも身につけている衣服にも血痕を染み込ませた、殺人鬼の群れ。

表情は狂気と過度の興奮に歪み、ようやく見つけた新しい獲物…俺達に対する悦びと歓迎すら窺えた。

彼らが今、心から欲しているのは、殺戮。

誰かを殺したくて。

殺したくて犯したくて嬲りたくて陵辱したくて。

やがて正常な人間を殺し尽くしたら、こいつらは錯乱者同士で殺し合いでも始めるのではないか。

それほどの強烈な衝動を感じさせた。