完全にイカレている。

あの高さから、足から着地すれば骨折するのはわかりきっている。

それでも飛び降りてきた。

俺達を襲う事しか頭にないかのように。

「く…狂ってるわ、コイツ…!」

ハルカが後ずさりしながら戦慄の表情を浮かべた。

だが、そのイカレぶりが好都合だった。

両手を伸ばし、掴みかかろうとする錯乱者。

俺はそれに見向きもせず、ハルカと共に走り出す。

足を骨折しているせいで、奴はまともに走れないだろう。

ならば無理に交戦する必要はない。

戦闘は最小限に留め、体力を温存する。

こんな無法地帯では、傷を負わない事こそが生存の為の最良の方法だった。