Dangerous city

階段を利用したのが裏目に出た。

錯乱者達は群れをなして上下から迫ってきている。

呻き声からして、既にすぐそこまで近づいてきているだろう。

進む事も戻る事もできないまま、階段の途中で立ち往生する俺とハルカ。

やがて…「!」

完全に正気を失った眼をした錯乱者の群れが、その姿を現した。

奇声を上げ、口元から涎を垂らし、舌を出して、眼をひん剥いて。

とても正常とは思えない形相の集団が、上からも下からも大群で押し寄せてくる。

ざっと見積もっても50はいるだろう。

とても素手で、ハルカを守りながら対抗できる数ではない。

逃げる事も留まる事もできない…どうする?

俺は焦燥に駆られながら、ふと…階段の途中に窓がある事に気づいた。

二階の階段の途中。

それなりの高さがある筈だ。

飛び降りれば怪我の一つもするかもしれない。

しかし…。

「ハルカ、覚悟を決めてくれ!」

「え、きゃあ!?」

俺はハルカを素早く抱き上げ、二階の窓からその身を躍らせた!

伸びてくる錯乱者達の無数の手から逃がれるように、窓の外へと跳躍する!