Dangerous city

何もない、誰もいない行く手。

聞こえてくるのは上の階から近づいてくる錯乱者達の呻き声のみ。

だが…。

「違うわ、これ…」

耳をそばだてていたハルカも、やっと事態に気がついた。

「上の階だけじゃない…下の階からも呻き声が聞こえる!」

そう。

既にこのホテルは、無数の錯乱者達によって占拠されていたのだ。

上の階も下の階も、埋め尽くされるほどの数の錯乱者が徘徊している。

まともな人間など、もう俺達以外いないのかもしれない。

そして何より問題なのは…。

「下の階からも呻き声が近づいてきている…!」

俺は歯噛みした。

「このままじゃ挟み撃ちにされるぞ…」