錯乱者の群れから解放され、腰を抜かして床にへたり込んでいるハルカのそばにしゃがみ込む。

「大丈夫か、ハルカ?」

「う…うん…」

コクコクと頷くハルカは、しきりに腕についた傷を気にしていた。

錯乱者達に腕を掴まれた時に出来た、引っ掻き傷。

赤い蚯蚓腫れになったその傷には、僅かに血が滲んでいる。

傷自体は大した事はない。

しかし。

「ねぇ、あいつら本当に変なウイルスとかに感染していないよね?大丈夫だよね?」

彼女は泣きそうな顔をして俺に訴えかけた。

ハルカがよく見るホラー映画のストーリーでは、ゾンビに襲われた人間が、その傷が元で感染し、同じようにゾンビ化するというものがある。

彼女はそれを心配しているのだろう。