しかし。

「つっ!」

俺は思わず顔を顰める。

取り押さえた筈の従業員。

その彼が、床に倒されたまま俺の片足に噛みついてきたのだ。

明らかに常軌を逸した行動。

普通ここまでして抵抗する人間はいない。

錯乱しているか、獣並みの知能しか持ち合わせていないかのどちらかだ。

まるで足の肉を食い千切ろうとしているかのような、強い咬合。

俺はもう片方の足で、従業員の喉元に足刀を突き入れる!

「アガ!」

瞬間的に気道が塞がれた事で、従業員は気絶した。

「……」

やっと意識を失った事を確認し、俺は従業員の手を放す。

思わず溜息が出た。

完璧に異常者だ。

麻薬か何かの中毒者なのかもしれない。