Dangerous city

完全に海に没した潜水艦。

もう海を眺めている必要はないし、また、その時間もない。

「いいか、ハルカ」

俺は八戸から投げ渡された二挺の銃のうち、ライフルに弾を装填する。

「もし俺がダメでも迷わず逃げろ。振り向かずに全力で走るんだ。いいな?」

「え…?」

我が耳を疑うような表情で、ハルカが俺を見た。

「恭一?あんた何言ってるの?」

「つまり…」

両手でしっかりとライフルを保持し、車道の先を見据える。

…アスファルトが見えなくなるくらいに埋め尽くされた群衆が、こちらへと喚きながら近づいてくるのが見えた。

前方だけではない。

背後の車道からも、相当数の大群が迫ってくる。

「四面楚歌だって事だ」

俺は緊張した表情で呟いた。