Dangerous city

しかし。

彼女が海に飛び込んだ目的は、泳いで街を脱出する為ではなかった。

「ねぇ、見て恭一!あれ!」

ハルカが逸早く何かを見つけて指差す。

彼女が指差したもの。

それは黒い巨体を海面へと浮上させた物体だった。

遠目に見れば鯨のようにも見えるそれ。

だが同じものを、俺は自衛隊や軍の基地で見かけた事がある。

「潜水艦…?」

まさか。

何の許可もなく、あんな巨大な潜水艦が地方都市の沿岸にまで接近していたというのか。

それも、テロリストである八戸の回収の為だけに。

八戸のあの行動から察するに、あらかじめこのポイントでの回収を予定していたのだろう。

ならばあの潜水艦は、八戸言う所の『クライアント』。

彼女が現在雇われている組織のものだろう。