何か別の脱出方法を考えなければならない。

が、とりあえず俺はポケットの中の携帯に手を伸ばした。

今なら錯乱者達の追跡からも逃れている。

話くらいはできそうだ。

「もしもし。六道さんですか?」

『良かった、無事だったか。なかなか繋がらないんで心配したぞ』

心底安心したように電話の向こうで六道さんが言う。

「ええ。今、街の北側にある海に面した車道まで移動した所です。錯乱者の群れが迫ってきて、ここもそれ程安全じゃないですが…」

『そうか。間もなく俺達もそっちに到着する。あともう少しだけ持ち堪えてくれ』

励ましの言葉をかけてくれる六道さんは、どこか祈るような口調だった。

『ところで永瀬…その錯乱者だが…公安の調査でやっと異常事態の原因が判明したんだ』