奇声を上げながら、凶器を振りかざして追跡してくる錯乱者の群れ。

どうやら無意味に奇声を上げている訳ではないらしい。

その声によって群れが群れを呼び、どんどん大きな大群となっていく。

一体この街にはどれだけの錯乱者がいるのか。

あっという間に数十人の群れとなった理性なき殺人鬼達の剥き出しの殺意が、一斉に俺達三人に向けられる…!

その視線に、鳥肌が立つほどの恐怖を覚えた。

あまりの戦慄に、こちらまで声を上げて喚きたくなってくる。

しかし今必要なのは脅えて蹲って現実逃避する事ではなく、見苦しくとも必死に足掻いて、この地獄からの突破口を見い出す事!

「先に行け!」

八戸とハルカを先行させ、俺は拳銃を構えたまま錯乱者達の群れと対峙する。

勿論拳銃だけでは、とても連中とは戦えない。

あまりにも数が違いすぎる。

だが。

「これならどうだ!」

俺は通りの路肩に打ち捨てられていた乗用車の給油口を狙って発砲!

途端にガソリンタンクに引火し、乗用車は大爆発!

迫ってきていた錯乱者の群れを、爆発と炎が飲み込んだ!