『そうそう、目的地までは結構あるんにゃん?』

「そうですね、今日中にはたどり着けそうもない位の距離がありますね」

『まかせるのだんにゃん』

あたしは自己流「華麗の舞」を踊りつつ、ホイっと小細工魔法を使った。
辺りからは色んな素材が飛んできて、農家で使う様な荷馬車を作ってみた。
荷馬車に干草が積まれている、ごくスタンダードのタイプだ。
引っぱるのは生きた馬じゃなく木馬なんだけどね。

「!?…少し驚きました
 小細工魔法ってこんな事も出来るのですね!?」

『小細工魔法士は、小細工を駆使する事でほぼどんな事も出来る「万能魔法使い」なのだんにゃん』

クリーダったら本当に驚いていたよ、でもビックリした顔も美しいんだ、美しいんだよ。

「この荷馬車に乗って行くのですか?」

『その昔、人は荷馬車の干草を見ると寝そべりたくなったと言うそうだんにゃん』

「なるほど…」

『干草に寝そべってこそ旅って感じがするもんだんにゃん』

あたしは荷台の干草にゴロンと寝そべって見せた。

「せっかくの新しいローブに干草がずいぶんと付いちゃってますけど」

『それが荷馬車の醍醐味ってヤツだんにゃん
 さぁ、クリーダも乗った乗った!』

クリーダを無理やり荷馬車に乗せると、目的地へと出発した。

『よいではないか~!よいではないか~!』

「…あの…」

『よいではないか~!よいではないか~!…んむ?
 どうしたんにゃん?』

「何ですか?その『よいではないか~』って言うのは」

『クリーダは知らないのかんにゃん?
 荷馬車の上では言うものらしいんにゃん!』

「知りませんでした、そうなのですね勉強になります」

『クリーダも一緒に言うんにゃん!
 さぁ、よいではないか~!よいではないか~!』

「あ、はい
 よいではないか~!よいではないか~!」

それから10分程して、あたしは旅に出るのは荷馬車じゃなくて幌馬車だったと言う事に気が付いたとさ。