兵士達は剣を抜き、あたし達を警戒して取り囲んだ。
そりゃぁ、演習中にいきなり羽ばたき機で降りてくる者がいたら、不審に思うのは普通だろうけど。

「何者だ?」

その中の隊長っぽい男が、こういう場面でありきたり過ぎる言葉を投げかけてきた。

「わたし達はマトラ王国の魔戦士組合の者です」

クリーダが名乗ってバッヂを見せた。

「ふむ、ふざけた格好だがそのバッヂは本物だな」

確かに…、あたし達って思いっきりコスプレしてますからね。

「それで、組合が軍に何の用だ?」

やっぱり軍か、軍ってこんな所で演習していたのかーッ!

「わたし達は組合の業務を現在遂行中なのですが、
 ここの責任者の方と少々面談させて頂けますでしょうか?」

「今は演習中だ、用事があるなら終わってからにしてもらいたい」

「そうはいきません、わたし達はこの演習の騒音被害を解決するのが今回の仕事ですから」

クリーダは妥協せず、組合の依頼書を男に見せて言った。
何者にも臆することないその度胸、コスも相まって美しすぎるぞー。

ところで、この組合の依頼書には実はちょっとした権限があるのだ、組織図では組合はマトラ王国の直下だから軍とは同じ位置にある。
簡単に言えば軍が王国のものならば、組合は民間のものという違いだね。
でもって、依頼書には王国の印も押してあり、任務遂行の為の権限を行使出来るんだ。

「そうか、ドラド村は確かにあの山の向こうだな…少し待っていろ」

今までとは一転したその男は大きなテントへ走って行った。

こういうものって軍人には特に効果があるもんらしい。ふぅ、どうやら無事解決しそうかな?
気が緩んだ所であたしは取り囲む兵隊達を横目に大きく伸びをして、しっぽをねじねじしてポーズをとって「んにゃん」と鳴いて見せた。

兵士達は決して顔は動かさず、目だけを動かしてあたしのしっぽを見つめていたよ。