「これ程の数のルクトイが居るとすると…これはどう考えても」

『お国が絡んでるとしか思えないんにゃん』

このマトラ王国は世界大戦以前は侵略国家だった、盛んに周辺の国々を次々と攻めその領地を広げていたんだよ。
そして、世界大戦後は見かけ上は大人しくなったんだけど、兵器の生産や開発は継続されているのは知っていた。
今は時代に合った小さい規模のものを扱い、それを商品として輸出するのが主だと思っていたけど、ルクトイがまだ存在していたとはね。

そうなるとこのルクトイ達は、ここで演習か何かをしてるんだろうな。
ルクトイ達の主砲は互いに相手に当たってはいない、多分わざと外しているな。

「どうします?やっぱり倒しますか?」

『まさか…国の兵器とやり合うつもりかんにゃん?』

そしたらさ、クリーダはクスリと笑ったよ。
しかも冗談で笑う感じじゃなかったんだ、これはヘタしたら本当に戦いかねない気がしたよ。

『コイツ等を動かしてるのがどっかにいるはずだんにゃん』

「えぇ、本当に戦ってる訳じゃないみたいですし、恐らく両方が見える所にいるでしょうね」

『んー、こっちにはいないみたいだし反対側かんにゃん』

「今回のお仕事のクリア条件は、騒々しい鬼を何とかして欲しいという事でしたね」

『そうだんにゃん
 だから静かになればクリアなのだんにゃん』

あたし達はルクトイのいる地帯を、羽ばたき機で迂回して反対側に出る事にした。

ルクトイの主砲の音が耳に痛い、爆発の音の前に鳴る雷の様な音がとても嫌な感じなんだ。

「あれは一般的な精霊魔法と同じ方法で放たれています
 威力は相当違いますが基本は同じです」

『ほほぉー、さすが科学魔導士だんにゃん』

思った通り、さっきの場所の正反対に大きなテントがいくつか見えた。
テントにはマトラ王国の旗が掲げてある、するとこれはやっぱり軍なのか?

真ん中の一番大きなテントの脇へ、あたし達の乗った羽ばたき機を着陸させた。
ともかくルクトイを移動するなり撤退するなりしてもらわないと、あたし達は報酬がもらえないからしょうがない。
着陸する前からテントから出てきた10人程の兵士に囲まれている、何だかちょっと悪い予感がするなぁ。