まどろむ様な時間は儚くも終焉を迎えることになった。
それは、西の空が赤く燃え、空気に緊張が走ったからだ。
少しして遠くに聞く雷の様な低く重い音と、地表を伝って来た振動が山を…そして森を越えて届いて来た。

「これは…」

『うむ、ついに来たかんにゃん』

鬼かーッ!?鬼なのかーッ!?

あたしが想像していた鬼の騒ぎと全然違うじゃないか。
てっきり酔っ払った鬼が陽気にヨイヨイと踊って騒いでいるのを想定していたよ。
だが、今の振動と音は何だ?戦争でも始まったんじゃないか?って位のスケールだったぞ。

あたし達はベニトを起こし家に戻る様に言うと、原因を突き止めるべく西の空を目指した。

『どうやら山を越えた先だんにゃん』

「急ぎましょう」

村は小さな山に囲まれた盆地になっている。
そして、鬼が起こしていると思われるその音は、その山を越えた先から聞こえて来ている。
しかし、小さな山と言っても実際には相当な距離があり、山頂にたどり着くのに1時間位かかってしまうかもしれない上に、道中には灯りがない。

『待った!
 この夜道を走るのは無茶というもの、なので乗り物を作るんにゃん』

「そうですね、真っ暗ですから」

あたしは両手を「パン」と合わせ、辺りに小気味よい音を響かせると地面に手を付けて小細工魔法を使った。
手をついた地面から光の円形の図形が現れ、そのお陰でつかの間だが闇を照らす事が出来る。
辺りにはブンブンと言う物の飛び交う音や、その物が削れる様な音が響き、少ししてその音は治まった。
円形の図形もそれと同時に消えて行き、また周囲は暗闇に戻った。

「今のアクション、今までの中では一番良かったですね」

『ふっふーん、やっぱりそう思うかんにゃん?
 人気漫画「赤毛のレンコン地主」から頂いたんにゃん』