「くっそ!バカヒーラーさっさと回復しろよッ!!」

「は…はい」

あの男の怒鳴り声とは別の女の声がした。
そうか、もう1人ヒーラーと呼ばれる魔法使いがいるらしいな、ターゲットはこの男1人だけなのだが。

「あ…あのッ…」

「なんだ!!早くしろッ!!!」

「…出来ない…」

「あッ!?何が!!」

「回復魔法が出ないんです!!ワァァァァッ!」

ヒーラーと呼ばれる魔法使いの女は、泣き声の様な声をあげパニックを起こしていた。

「バカな!!いつもやってるじゃ…ハッ!?」


『出来ませんよ』


この部屋の入り口から見える光景。

倉庫らしき薄暗い部屋には、どう集めたのかわからない程の金品が大量に置かれている。

その一番奥に足を削られ血を流しながら這う男と、うずくまって場の恐怖に震える女。

床には男の血の跡が1本。


『それじゃ』

と言った瞬間床が抜けた様な衝撃を感じ、わたしは地面に崩れ落ちた。

「ヒャッハァァーッ!!」

床に叩きつかれるのと同時にあの男が歓喜をあげているのが聞こえた。

「魔法の力ナメんな!!このカスッ!!」

起き上がろうとして、何が起こったのかが分かった。

『…足が…?』

足が焼けるように熱い。

「ギャハハハハハァァーーーッ!!ねぇよバァカ!!」

どうやら入り口の床の下に、トラップ魔法が仕掛けられていた様だ。
部屋中に血のしぶきが飛び、あの男の顔にもかかっていた。

手で足の状態を確認してみると、ぬるっと言う感触がして膝の上辺りから下がなくなっていた。

「それじゃ」

さっきわたしが言った台詞を、男は恍惚の表情で言った。






『それじゃ…』


わたしは誰もいなくなった部屋で独り言を言うと、次の目的地に向かった。