「さっきの話ですが、多分顔を覚える必要はなさそうです」

「なんだとぉ?
 ケッ、何が二億度だ!マジで笑かせてくれるぜ
 だがな嫌でも忘れられない様にしてやる」

お約束どおり、嫌な男は下品な顔でニヤリと笑った。
そんでもって最初に仲間にやらせるんだよな。

「お前達!やっちまいなッ!」

嫌な男が手で合図すると仲間がぞろっと前に出て来たよ。
セリフすらないヤツも出てきたんだ。

1人は武器すら持たず、両手でただ掴みかかろうと構えてる上半身裸の太ったヤツ。
何かわからないけど、鎖を持って頭の上でブンブンまわしてるヤツ。
一丁前に剣と盾を持ってて、頭に載せたカブトに二本のツノが生えてるヤツ。
そしてその他は、ただ居るだけで構えもしないヤツ。

こういう奴らってほぼ100%一瞬でやられるんだよな。

「やれっ!」

嫌な男から号令が出ると、そいつ等は「わーっ」という声を上げて飛びかかって来たよ。
黒髪の女の人が片手で「あっちいけ」って振りしたら一瞬でどっかに吹っ飛んでったけど。

「なにぃ!?て・・てめぇ・・よくも中間達をやってくれたな」

「さぁ、あなたの小細工魔法の出番です」

黒髪の女の人はあたしに振り返ってそう言ったんだ。

「ウハハーーッ!バァカメッ!隙を見せやがったな!?」

嫌な男はそのセリフを最後に、どこか遠くに飛んでったよ。

「やっぱり思った通りです
 あなたの小細工魔法、とても素敵ですよ」

わたしの使った小細工魔法、それは周りの木の1本に小細工をかけ、嫌な男をつまんで遠くに放り投げるものだった。

『あの・・
 あなたの名前を教えてくれませんか?』

「わたしはクリーダ、クリーダ・ヴァナディンです
 これからよろしくお願いします」

そう言ってクリーダは微笑んだんだ。

今日のこの日、あたしとクリーダは初めて出合ったんだ。