「ヘリオさんの手がわたしの手に当たって気が付いたから良かったものの、もし気が付かなかったらどういう事になっていたかと思うと」

『クリーダの手に当たったんにゃん?』

あたしは布団の左側も探ってみた、こっちもあったかい。でもこれはいつも通りだ。


「お前もこの娘の布団に潜り込んでたんだから、寝相の悪さなら相当なもんだろ?」

「わたしの場合、寝相のせいではありま…」

途中で何を言っているか気が付いて口篭るクリーダ。そりゃー、いつもの様にあたしを抱き枕にしてたなんて言えないもんね。


「ん?寝相じゃないって?」

「ええと、この子の護衛の為です」

「ほー奇遇だな、実はオレも寝相は仮の姿で、本当はその娘の護衛の為だったんだ、
 お互い護衛仲間って事で仲良くしようぜ」

ヘリオがそう言い切ってニカっと笑った直後、魔戦士組合用のテント全体が揺れた。




その後、テントの外に設置されている水の入ったタンクに付いた蛇口をひねり、水を出して顔を洗って歯も磨いていた。
太陽の光が斜めにさして、あたし達の足元から長い影を作っている。


「ヘリオさんには気をつけて下さい、あの人あなたを狙ってますから」

『はえ?あたしを?』

男の人に狙われてるとか言われても、あたしには全くピンと来なかった。正直それがどういう事なのかよく分からないんだ。


『でもさぁ、護衛って言ってたんにゃん』

「それはあの人の出まかせです、騙されないで下さい」

『わかった、気をつけるんにゃん』

と言ってる視線の先をヘリオが歩いて行った、大きな剣を背負ってどこへ行くつもりだろ。

「お腹が空きましたよね、食事に行きましょうか」

『うん、軍って寝床は用意してくれても、ご飯は出してくれないんだんにゃん』