わたし達は建物の二階に移動していた。
一階はかなり荒れているが、二階はそれ程ではなかった。

一面埃だらけなのを除けばだけど。

わたし達の今いる部屋は、2階にいくつもある部屋の中でも一番広く豪華な部屋だ。
この屋敷のかつての主人が使っていた部屋だろうか、街を広く見渡せるのが今は特にいい。

「さーて、あたしは日が落ちないうちにチョッコリ散歩してくるけど、
 誰もついてこなくていいからな」

ルビーはそう言い椅子からピョコンと立ち上がった。

『そうですね、いってらっしゃい』

「ん?おチビさん一人で大丈夫か?オレも一緒に行ってやろうか」

「いんや、来なくていいのだ
 それから勇者さまだからっておチビさんとかちぃせーのとか言うの禁止なッ!」

ルビーはニヤっとしてラピスのスネを軽く蹴って鼻歌を歌いながら出て行った。

「(もしかしてトイレか?)」

ラピスはわたしに小声で言った。

「ところでリーダー、今回の作戦まだ決めてないがどうするんだ?」

『実はこの街の夜の状況についての情報が全くないのです
 何しろ戻れた者が誰もいませんからね
 なのでまず最初に状況を見て、それから作戦を考えようと思っています』

「そうか、まぁそうだな」

『10年間に何百人もの討伐隊がこの街へ向かって、
 誰一人帰還出来なかった事からしても、
 夜の状況は尋常ではないと思います、恐らく絶望的なものを見る事でしょう
 なので気を引き締めて行きましょう』

「なぁ、提案があるんだが」

『何ですか?』

「リーダーとおチビ・・じゃなかった・・ルビーは今すぐこの街から離れた所まで避難してくれないか?
 状況の確認ならオレが見て伝えればいい
 オレならまずやられないだろうし、ヤバそうだったらすぐ逃げるからさ」

ラピスは根っからの勇者さまなのだな。