次の日の朝、あたし達は仕事をすべく依頼人にサインを貰いに行った。

依頼者はナボラの市長、オーピメント・テンという人物で、この街の司祭でもある。
ナボラは街なのに、なぜか一番偉い人は市長なんだよね。
「テン市長」とでも言われたいんだろうか?見栄っ張りでしかも駄洒落が好きそうだ。

「やぁ、シンナバー
 随分と久しぶりじゃないか、元気だったかね?」

「は…はい、大変ご無沙汰しておりおり元気です」

なんだーッ!?あのシンナバーがタジタジじゃないか。

「まさか名づけ親の私がキミに助けてもらう日が来るとはな、まぁ今回はよろしく頼むよ」

「はい!精一杯頑張らせて頂くですます!」

シンナバーって、テン市長が付けた名前だったのか。祝福を与えたはずの子がとんだ毒舌だとはきっと知らないだろうな。

依頼書の開始許可のサインを貰い、あたし達はあの噴水前のベンチに腰掛た。
一休みせずに出かけたい所だったんだけど、どうもスフェーンが全くダメになっている様だ。

「スフェーン?あんた大丈夫?」

「ん…なぁに?あたしは大丈夫よ」

そう言ってるけど、何だか上の空の様にぼーっとしてる。

「ダメだこりゃッ!肝心のアタッカーがコレじゃぁねー
 今回の仕事失敗するかも」

『スフェーン?今日は辞めとく?』

「おチビたん、ちゅきちゅき大ちゅきー」

スフェーンはあたしににっこりしながら、その目は涙を流していた。あたしは彼女がとても哀れに思った。

「ふぅ…、荒治療になるけど連れてけば何とかなると信じよっかー
 もしダメそうならおチビがスフェーンを回収して撤収ね」

『…うん、わかった』

「とりあえず、あたしが今回の依頼の内容を説明させてもらうよ」

魔戦士組合では仕事を始める前に、確認の意味を込めて依頼内容を説明する。
それを説明する者はパーティーのリーダーだ、誰がリーダーになるかは臨機応変だけど、高ランクの者がなるのが普通だ。
だから、このパーティーでは一番ランクの高いスフェーンがリーダーのはずだったんだけど、今の彼女にはそれは無理そうなのでシンナバーが代役を務める事になったんだ。